はるのうららの中国一夜また一夜物語

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zoom RSS ☆第五夜☆ にくきものにも 五分の愛

<<   作成日時 : 2006/07/06 22:12   >>

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昨夜は涼しくて、心地よい眠りを期待したのに、電気を消して布団に横たわると・・・ぷぅ〜〜ん・・・・。おのれにっくき蚊、成敗してくれる。と、電気を点けると姿をくらまします。諦めてまた暗くすると・・・ぷぅ〜〜ん。


・・・北京の緑のないコンクリートの箱の中に住んでいだ頃、近くにボウフラの養殖池でもあるのかと思うくらい、毎晩数多の蚊に襲われました。あんなに蚊がいる国だから、蚊にまつわる故事でもあるかしら、と検索していたら、感動の物語を見つけました。今宵は涙の愛の物語です。訳文を打つ手も感動に震えます。(・・・長いです)


出典はどこなのでしょう。たくさんヒットしました。二つ紹介しておきます。
http://www.it201.com/wlwx/sanwen/200511/7230.html
http://news.xinhuanet.com/forum/2005-11/28/content_3834696.htm



              「蚊、愛の物語」



夜の帳が静かに下り、草むらのあちこちで虫の音が響いています。一対の蚊の男女が、草の葉で休んでいます。

男は草の汁を一口吸い、ふてくされて立っている女にそっと触れ、優しく言います。
「ねえ、君も一口お飲みよ。丸一日何も口にしないなんて、心配だな。」

女は露に濡れた草の葉を蔑むように見て言います。
「こんな味のないもの、どうして飲めるの?あなたったら毎日同じことばかり、嫌になる。」

「ねえ、君は人間と闘う気かい?人間は色んなもので僕たちを攻撃するんだよ。あのにおい、僕は嗅いだだけで、もうふらふらするよ。もし・・・」

「意気地なしね、あなたって。」
女は冷ややかに男に目をやり、羽を振るわせ飛び立って行きました。


人間の家の窓から漏れる灯りを、男は心配そうに見ていました。中に女がいるのです。なぜか今夜は特別に胸騒ぎがして、葉の上の彼の身体が、ずっと震えているのです。
人間の血が吸いたいという女の欲望を、男は抑えることができません。でも、女の無事を確認せずにはいられないのです。
ほんのささいなことで、二人は終わってしまう・・・急に、そんな悲しみに襲われたのです。 

重い夜露が男の身体を冷やします。女はまだ出ては来ません。


男は前世のことを思い出していました。
あの頃二人はペンギンでした。冷たい大地の上で、一日中楽しく、優雅に歩いていました。

あの頃男は、一番立派なペンギンでした。女をとても愛していました。彼女にプロポーズをするために、他のペンギンと同じように必死で石ころを探しました。見つけては捨て、拾っては捨て、転んで頭から血を流した時、やっと彼女にふさわしい、一番美しくて一番なめらかな石を、ひとつ見つけました。

でも女は、他の男と結婚しました。そいつは男の後ろについて、彼の捨てた石をみんな拾って彼女に贈ったのです。
ちゃちでいびつな石でした。でも、たくさんありました。いっぱいに積まれていました。
男は負けたのです。
しかし今世も女を追って、彼女と同じ蚊になりました。


男は待っている苦しみに耐えきれず、命がけで窓の中に入って行きました。

女はちょうど人間の腕に止まって、青い羽を軽く揺すりながら、夢中で血を吸っていました。左腕をじっとさせたままの人間が、そっと右手を上げます。

「早く逃げろ!」
男は張り裂けるほどの声で叫びました。

が、間に合いませんでした。女は苦しそうに身体を曲げ、床に落ちました。

男は血だらけの女のそばに跪き、雨のように涙を流しました。
女も力をふりしぼって男を見つめ、静かに涙をこぼしました。


「くやしいわ、本当に・・・。」
「君は二人を終わりにしてしまったんだ。」
男は全身血だらけの女を助け起こそうとします。
「なぜ君は僕の言うことを聞かなかったんだ。」


「わかってる。でも仕方なかったの。だって私、あなたの・・・赤ちゃんがいたの。栄養が、血が必要だったの・・・草の汁じゃ足りないわ。・・・私、死ぬのね。でもあなたは生きてね。人間はあなたに何もしないわ、だってあなたは何もしていないもの・・・」


女は瀕死の目を潤ませて、微笑んで言います。
「私だって、子供を産んだら慎重にするわ。でもこれは母親の責任・・・たとえどんなに罵られても、子供に一番良いものをあげたいの・・・。」
「なぜもっと早く言ってくれなかったの?」


「だってあなた、私を愛してるでしょ。あなたに言ったら、私の代わりにあなたがするわ。そしたら、今死ぬのはあなたじゃない・・・そんなのだめ。あぁ・・・あなたの子供を産んでいたら、心残りもなかったのに・・・前世であなたに罪を犯したから、今世で償いたかったけど、結局もっと罪をつくったわ・・・ペンギンだった頃ね、私、ずっとあなたを愛していたの。だけど他の男と結婚したわ・・・石をたくさんくれたから。ねえ知ってる?あの冷たい所で、十分な石がないのに卵を孵そうとしたら、子供は卵から出てくる前に、凍え死んでしまうのよ・・・あなたのくれたあの石、透き通っていて本当に綺麗だった。でもあれは愛情。単純な愛情では、長い結婚生活と子供への責任を支えられない・・・あなた、私を怨んでいる?」  


男は懸命に頭を振り、声も立てずに泣きました。
「悪いのは僕だ。僕は君を守らなかった。必要なものを何もあげなかった。君にこんな罰を与えた・・・来世では僕たち、カマキリになろうよ。新婚の夜に君は僕を食べて、僕の子を産むんだ・・・君の腹の中で死ぬ僕は、きっと幸せさ・・・。」

「いいえ、私たち蝉になりましょうよ。毎日露を吸って、歌を歌って・・・気をつけて・・・」
女はさっと笑顔を消し、大きくあえぎ、滝のように涙を流しました。
「早く行って、人が来たわ!」
男はちらりと振り向いて、寂しそうに、でも悔やむことなく笑いました。
「馬鹿だね・・・僕たち一緒に蝉になるんだろ?」


「パンッ!」
と音が響き、満足そうな声が聞こえます。
「ふんっ、また蚊の奴を一匹殺ってやったぜ!」


死にゆく前の一瞬、男は女をきつく抱きしめました。二人の血は一つになり、固まって一滴の赤い涙となりました・・・。


                (完)



今宵は面白い夢が見られそうです。

蚊が出てきたら、今夜こそ・・・。



オヤスミナサイ。



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
美しい話でした、感動しました。男と女の愛の昇華が前世・現世・そして
来世へ向けて遂げられていく 儚くも哀しい それでいて、なんなんだろう?この優しさに溢れた感動は。ペンギン 蚊 カマキリ この3種の生き物が愛という縦糸に紡がれていくなんて、、、はるのうららさん今夜は とても 眠れそうにもありません。 ありがとう。おやすみなさい。
蚊おとこ
2006/07/09 20:06
歓迎光臨。蚊おとこさん、感動していただき、ありがとうございます。眠れぬ夜は、グラス片手に蝉のから揚げなど、如何でしょうか?レシピは今宵の話をお読み下さいね。
下次再来!
はるのうらら
2006/07/09 22:39

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